名称 | 会場 | 年月 | 演奏等の内容 |
檸檬~ヴァイオリンとピアノのための~ | 国立音楽大学 | 2008年11月 | Vn.西槇恵利、Pf.加藤未奈。梶原基次郎の小説「檸檬」に着想を得て作曲、慢性的な憂鬱、一過性の幸福、暴力性を表現した。不協和音程を用いた無調和声を探求し、調性の外で和声による緊張と弛緩の様々な方法を試みた。拡張されたソナタ形式。 |
ライラック~アルトサクソフォンとピアノのための~ | 杉並公会堂小ホール | 2009年02月 | A.Sax.池原亜紀、Pf.安藤綾乃。4音による一つの音列が、和声や様々な方法による有機的発展によって表情を変えていくことで楽曲を構成 した。 |
The Crab Nebula | 国立音楽大学講堂 | 2009年11月 | Fl.佐藤結香、Cl.飯塚友衣、Tp.古澤若奈、Vn.藤井麻 由、Va.佐久間遥、Vc.岡林麻里子、Pf.正村恵、Cond.冨 田実里。学内オーディションより選抜。The Crab Neblaとは、おうし座の角に位置する1000年ほど前に爆発が観測された 超新星の名残がなおも膨張していく姿である。中心では中性子星が明滅を繰返し、同時に0.33/秒の周期で電波 やX線を出しながら可視光線で星雲全体を照らしている。12音列によるテーマの変形で色彩と膨張を、パルスによって中性子星を表現した。 |
恐ろしく憂鬱なる~萩原朔太郎の詩による~ | 杉並公会堂小ホール | 2010年03月 | Sop.米津知実、Fi.佐藤結香、Pf.大澤里紗。第12回TIAA全日本作曲家コンクール歌曲 部門審査員賞(最高位)受賞。萩原朔太郎「恐ろしく憂鬱なる」をテキストに用いて作曲。詩中に現れる「てふてふ(記述通り発音)」という蝶の羽が空気を打つ音を楽曲全体のモチーフとして使用した。 |
hyperornamental | 国立音楽大学 | 2010年06月 | A.Sax.岩渕みずき。純粋さへ行きつくためのある種の反語的道程として、あるいは自身を 含め効率主義者になりがちである現代人への否定として。「装飾すること」をテーマに作曲した。タイトルは過度を意味する接頭語hyperとornamental(飾り立てた)による造語。 |
Dans le style de FAURÉ | Conservatoire a Rayonnement Régional de Nice | 2010年08月 | Fl.真壁実希、Pf.川崎真由子。ニース夏期国際アカデ ミーBernard DE CREPY氏のAnalyse et compositionクラス優秀者として発表。フォーレのスタイルによるFl.とPf.のための和声課題。 |
フーガ | 国立音楽大学 | 2010年11月 | サックス四重奏のために作曲。 |
陰影 | 国立音楽大学講堂 | 2010年11月 | Fl.佐藤結香、Ob.沖原梓、1st Hr.三木麻生未、2nd Hr. 今井結花、Tp.古澤若奈、Harp 濱田愛美、1st Vn.藤井 麻由、2nd Vn.西槇恵利、Va.渡辺康仁、Vc.三矢憲幸、 Cb.江口翠、Cond.冨田実里。学内オーディションより選抜。ある元となるものに新たな要素が生まれ、それに抗いつつも受容しようとするプロセスを、一つ音列とその倍音からなるもう一つの音列によって構成した。また、物理的な陰りによる色彩的なコントラストをつけるために、三和音や属七の和音を無調音楽の中に取り入れることで、影の効果をより鮮明に表現できるのではないかと考えた。 |
かつて夜の灰色から浮かび上がり | | 2011年01月 | 塩尻市立塩尻西部中学校吹奏楽部からアンサンブ ル・コンテストのため委嘱。混成七重奏曲。クレーの同名の絵画から着想を得て。初心者の技術で演奏可能なこと、各パートに見せ場があることに重点を置き、作曲した。また、委嘱先からの要望である「大人っぽい曲」に応 えるため、近代フランス的、武満的な和声を取り入れた。 |
その手は菓子である~萩原朔太郎の詩による~ | 台東区旧東京音楽学校奏楽堂「平成23年度奏楽堂日本歌曲コンクール作曲部門第18回本選会」および「平成23年度奏楽堂日本 歌曲コンクール作曲部門第18 回入賞記念コンサート」 | 2011年05月 | Sop.馬原裕子、Vib.安江佐和子。平成23年度奏楽堂日本歌曲コンクール作曲部門第18回一般の部第3位受賞。萩原朔太郎の「その手は菓子である」をテキストに用いて作曲。詩の構造を音楽に置き換えるとともに、詩の内容から感じ取れるグロテスクと可愛らしさの同居を目指した。Vib.とSop.の奏法を探求し、様々な音色を使って詩の世界を表現した。 |
≠Pathos | 大泉学園ゆめりあホール | 2011年09月 | Vn.知見寺武、Vc.細井唯。第12回TIAA全日本作曲家コンクー ル室内楽部門入選。計算された美しさをテーマに作曲し た。冒頭のVn.が奏する一節がこの曲の核となっており、 これは作曲者が美しいと感じた音を選び取ったにすぎな い。この何の理屈もないまったくの感情=Pathosをいかにして理論的に定着させるかということが楽曲構造となっている。 |
フーガホ短調 | 国立音楽大学 | 2011年11月 | 弦楽四重奏のために作曲。自作の主唱によるフーガ。 |
La jupe | けやきホール「戦う!!ヴァイオリン~辺見康孝無伴奏リサイタル~」 | 2011年12月 | Vn.辺見康孝。一つのものが持つ二面性を表現することをテーマに作曲した。曲はVn.の開放弦から派生した音列、それと対照をなすと考えたもう一つの増4度や半音階を含む音列に基づいて構成される。順番に現れる二つの音列と関連する要素は、次第に各々の楽想を確保し、 最後には16分音符単位で交替する。 |
かつて夜の灰色から浮かび上がり | 塩尻レザンホール | 2012年01月 | 塩尻市立塩尻西部中学校吹奏楽部からの委嘱による自作編曲。混成六重奏曲。 |
La jupe II | 国立音楽大学講堂 | 2012年02月 | 指揮:板倉康明、演奏:国立音楽大学有志オーケストラ。 独奏Vn.のための《La jupe》と同様に、二面性をテーマに 作曲した。対極をなす二つの動機が提示され、その交替 によって曲は展開するが、それぞれの時間は次第に短くなり、遂には同居する。しかし、ソロとオーケストラでの表現方法は大きく異なり、二つの側面はより拡張される。そしてその側面の、行き過ぎた拡張によってもととは逆の性格に変容してしまうことはないだろうか。また、同居できていたものが、過剰な拡張というエネルギーにより、他方に飲み込まれてしまうことはないだろうか。以上のことを音楽によって表現することを作曲の意図とした。 |
Les fleurs | 杉並公会堂 | 2012年03月 | Sop.溝淵加奈枝、Fl.佐藤結香、Ob.三上恵未、Cl.草野 裕輝、Bsn.柳澤香澄、Hr.古田龍平、Tp.古澤若奈、Trb. 戸井田晃和、Perc.悪原至、1st Vn.知見寺武、2nd Vn.斎 藤羽奈子、Va.迫田圭、Vc.細井唯、Cb.廣永瞬、Cond.冨田実里。小説や演説でなく 図鑑的な音楽を作ることを試みた。個を並べることで全体を構成する方法を取り、一つ一つの音そのものとより一層向き合うことで自身の作品を客観視し、作曲家と作品の距離を模索した。 |
フーガ変ロ長調 | 国立音楽大学 | 2012年11月 | サックス四重奏のために作曲。シューマンのフーガを研究し、主唱・対唱の反行形を用いた。また、サックスの音色を生かすため、B durでモルデントを伴う9/8拍子の牧歌的な主唱を自作した。 |
ラヴェルの語法による小品 | 国立音楽大学講堂 | 2013年01月 | Vn.藤井麻由、Vc.岡林麻里子、Pf.正村恵。ラヴェル《ピアノ三重奏曲》を分析し、それはラモーやクープランのオルドルを拡大したものとして考えられたのではないかという考察に至った。この曲は、その考察に基づき《ピアノ三重奏曲》の第3楽章と第4楽章の間に挿入する、第3.5楽章を想定して作曲した。サラバンド風パッサカーユとジーグ風フィナーレの間に置くことを想定し、曲調はガヴォットであり、主題やリズム、調も他の楽章の規則にのっとり関係させた。 |
スタイル和声課題集 | 国立音楽大学 | 2013年07月 | 弦楽四重奏のためのスタイル和声課題。モーツァルトの和声法を研究し、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、シューマン、フランク、フォーレ、ドビュッシー、ラヴェルの和声書法・弦楽器書法を用いた課題を作成し、演奏発表した。 |
ピアノ~小笠原鳥類の詩による~ | 東京オペラシティリサイタルホール「第30回現音作曲新人賞本選会」 | 2013年11月 | Sop.太田真紀、B.Cl.菊池秀夫。第30回現音作曲新人賞(第1位)受賞。曲は小笠原鳥類の詩「ピアノ」をテキストに用い、リリシズムを排除した場所で、言葉を生き物のようにうねうねとさせることをコンセプトに作曲されている。敢えて文章という枠組みを与えることで、音楽の流れ(文法)の中での断絶や挿入、繰返しによるショックでもって言葉そのものを際立たせようと試みた。一見バラバラの単語に同じ歌唱法や和音を与え統一することで、言葉はもはや元とは異なった意味を持ち始め、テキストの時制に合わせてテンポを変えることで、単語よりも大きな単位での断絶を行った。そこに生まれる緊張によって、音楽はうねうねと蠢く生物へと変容する。 |
プリペアド・ピアノのための「(機会仕掛けの)鳥のさえずり」 | 国立音楽大学 | 2013年12月 | Pf. 川崎真由子。プリペアド・ピアノの奏法を研究して作曲。ラモーの《クラヴサン曲集》第6曲〈鳥のさえずり〉を下敷きに、ラヴェルの愛した機械仕掛けの鳥の玩具をプリペアド・ピアノで表現した。 |
Prélude et Fugue de style Ravel | 国立音楽大学講堂 | 2014年01月 | Fl.永瀬有里恵、Ob.椎野未花、Cl.草野裕輝、Bsn.小林香緒理、Hr.幸喜いずみ、Tp.勘堂惟威、1st.Vn.原実和子、2nd.Vn.門倉佑季子、Va.渡辺康仁、Vc.三矢憲幸、Cb.永井桜、Cond.川崎真由子。ラヴェルが作品中で用いた様々な対位法の中から、模倣・異なる主題の組み合わせ・線による和声・ポリリズムを用いて作品とした。プレリュードは主部において8分の9拍子が用いられ、中間部ではその変形が2分の3拍子の新しい主題と組み合わされ、後に完全な形で両主題が組み合わされるという<パントゥム>的な構成を持っている。プレリュードで垂直方向に組み合わされた二つの主題は、水平方向に組み合わされてフーガ主題を作る。 |
New York 1954-55 | Tenri Curtual Institute(US)及び代官山ヒルサイドプラザ「TOKYO TO NEW YORK 2016」 | 2016年11月 | Cl.Thomas Piercy、Pf.Taka Kigawa、田中翔一朗。TOKYO TO NEW YORK 2016公募入選。クラリネットは本来滑らかな音色を特徴とするが、あえてこの楽器でザラザラとした音楽を生み出せないかと考え、この曲を作曲した。タイトルは、作曲にあたりインスパイアされた、1954-55年のニューヨークのスナップ写真を収めたウィリアム・クラインの写真集による。写真はいわゆる”アレ・ブレ・ボケ”の手法で撮影されており、写真の荒れた粒子、ぼやけた輪郭には、当時のニューヨークの沸き立つエネルギーが溢れている。音楽においても、隣接する膨大なエネルギーにより、空白にその余韻や静かな持続を感じることができるのではないか。それがこの創作にあたっての興味の一つである。 |
ラヴェルの様式によるフーガ | スタジオリリタ「金沢昭奈×Quartet Vitaニューイヤーコンサート」 | 2019年01月 | 1st.Vn.田中安梨、2nd.Vn.加藤由佳、Va.橋本歩、Vc.小川真貴。山口博史著「パリ音楽院の方式によるフーガ書法」(音楽之友社)掲載。調性のエネルギーとストレット等の対位法技法によって緊張を作り出す元来のフーガに対して、ラヴェルは旋法を用いることで、より微細な色彩を表わそうとした。一部調性的な部分もあるが、それはあくまでも旋法との対比により色彩の差を出そうとしたものである。一貫した3声、クライマックスにおいて敢えてピアニッシモを指定すること、緻密に計算された黄金分割、狭い音域といった様々な抑制、そして〈フーガ〉というとりわけ抑制された様式を用いることで、彼は微細な色彩と線の絡み合いの聴取を見事に成功させている。上記のような《クープランの墓》のフーガに見られる特徴、またそれが作曲されたRavel中期の作品に見られる語法を用い、弦楽四重奏のためのフーガを作曲した。 |
ヴァイオリンとバスクラリネットのための「くちばし 丈夫でとがる」 | 杉並公会堂及び京都ロームシアター「カルチエミュジコ クラリネット&ヴァイオリンデュオコンセール ノートゥス-南からの風」 | 2019年06月 | B.Cl.菊地秀夫、Vn.印田千裕。フランス現代音楽を中心としたコンサート企画、書籍出版などを行う音楽集団カルチエミュジコによる委嘱初演。ポルトガル大使館後援。近作は友人の詩人である小笠原鳥類氏の作品に見られるような言葉の間にある摩擦を音楽で表現することを考えてきた。前年にはパリ音楽院古楽科教授のRaphaël Picazos氏のノートルダム楽派講習会に参加し、氏が歌う倚音の美しさを、ぶつかり合い、協和する空間の中で表現することを試みた。 |
Papillon pour Cor seur | 北とぴあペガサスホール「近藤圭ホルンリサイタル-現代曲、その可能性-第3回問う」 | 2021年01月 | Hr.近藤圭。敢えてホルンのイメージとは程遠い蝶の羽ばたきを構成要素とし、従来のホルンとは異なるイメージの音楽創作に挑戦した。グリーグ作曲『抒情小品集第3集』より「蝶々」の冒頭モティーフの音列を用い、シンメトリックな構成となっている。 |